ブルゴーニュはその著名な畑が世襲で親から子へと受け継がれる、あるいは巨大な会社が保有し続ける、という文脈から歴史上良くも悪くも変化が少ない生産地でした。
ただこの10年程の時間の経過の中で、かなり変化の速度が増しているように感じています。それはブルゴーニュに元々縁のなかった若い生産者が次々に秀逸なワインの生産を始めているという部分にも表れていますし、由緒あるドメーヌが世代交代によってその品質を飛躍的に高めていることにも表れています。
今回ご紹介するドメーヌ・フーリエはまさにこの後者のパターンです。
所有する畑の70%以上が1級あるいは特級の畑という豪華絢爛な畑を所有するドメーヌ・フーリエを1994年に23歳の若さで引き継いだジャン・マリー・フーリエ。アンリ・ジャイエやオレゴンのドメーヌ・ドルーアンで研鑽を積んだ彼がドメーヌ・フーリエの当主としてでなくジャン・マリー・フーリエとしてスターダムに登るのはブルゴーニュ世紀のヴィンテージと言われた2005年の翌年、2006年ヴィンテージ以降のことです。
このヴィンテージから「俺のワインは安すぎた」と豪語し大幅な値上げを敢行したジャン・マリー。今までの付き合いがあるから仕入れてはみたものの、この値段では翌年以降使えないなあと思いつつブルゴーニュ・ルージュのテイスティングに臨んで見るとそこにはクラスを大きく超え仕入れ価格を凌駕したポテンシャルがありました。
翌2007年ヴィンテージには某ガイド誌にも大絶賛され瞬く間に入手困難な作り手に。
こちらの2014年も柔らかい接触とグランクリュを連想させる妖艶な香り、質感は健在。
まだまだ膨らみかけではありますが、ブルゴーニュ・ルージュの枠の中でこれ以上のポテンシャルを秘めたものは中々ない、もしかしたらNo.1かもしれません。
これだけのセンスに触れる機会は希少です。是非。
リストランティーノ・ルベロ
ソムリエ 加瀬